面白いアニメ・ゲーム・小説が知りたい! どうしてこんなに面白い?

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虚淵玄

「楽園追放」 3Dアニメの神髄



楽園追放を見てきたので、興奮したままの勢いで感想を書こうと思います。(ネタバレあり)

この映画の魅力は物語より映像だと思いますし、意外性を狙った物語ではなかったので、ネタバレ読んでも楽しめると思います。

ちゃんとSFしてるせいでわかりにくいのと、アンジェラのケツを見るのに集中していて、物語をちゃんと見てなかった人もいそうなので、ストーリー解説してみます。

ぜひぜひ全編見てみるべきだと思います! 前半のアンジェラは可愛かったし、後半の一連の戦闘シ―ンはかなり長く、ものすごいスタイリッシュでカッコいい映像でした。アニメ好きなら、見ないと損です。


一言で言うと、映像面でも、シナリオ面でも、素晴らしいと思います。という感じです。

脚本の虚淵さんは、「この作品がまどマギより先に世に出ていれば、自分の評価も違っていた」 と言っています。楽園追放のほうが企画立ち上げは先だったらしいですね。確かに、「楽園追放」は王道でありながら、グロではなく萌えとロボットに頼り、本来の虚淵さんらしい哲学的なテーマを含んだ娯楽作品です。

楽園追放が先だったら、虚ブッチャーなんて呼ばれることもなかったでしょう。

概要(ストーリー解説)

官僚風味のアンジェラ・バルザックは、情報化された人類が住む「ディーバ」の3等官。地球上から、宇宙にあるディーバにハッキングをしかけてくる「フロンティアセクター」という存在を調査するため、地上に残っている人類の一人であるディンゴと協力するため、地球に降り立ちます。

戦闘用?ロボット「アーハン」は、オンラインでディーバの演算処理を受けて、人間ではありえない操縦を可能にします。しかしオンラインであるが故に、ハッカーであるフロンティアセクターの格好の餌食、という理由でディンゴに早速アンテナをぶっ壊されて粗大ごみに。

そんなこんなでアンジェラとディンゴの二人旅が始まりました。色々あった後、二人はフロンティアセクターに接触します。彼は、人工知能(AI)であり、存在意義として「人々をロケットにのせて宇宙探索に出ること」を設定されていました。

ハッキングは、ディーバの人々に対する、共に宇宙探索に出ようという誘いだったのですね。

アンジェラはそのことを上層部に報告するため、フロンティアセクターに回線を用意してもらってディーバに戻ります。しかし上層部は「どうしてそんな危険なフロンティアセクターを無力化しなかったのか」とお怒り。アンジェラはムキになってフロンティアセクターはいい子だよ! と説得するも、逆効果で、アンジェラはアーカイブ化されてしまいます。ディーバの人々はデータなので、そういうことが可能なんです。


で、失意に暮れるアンジェラを、フロンティアセクターがハッキングで助けに来ます。アンジェラはアーハンとその武装をディーバから奪って、フロンティアセクターのロケット発射を成功させるべく、襲ってくる仲間たちと戦います。

楽園であるディーバを捨てて、仁義のために仲間を助けに行く。
これが「楽園追放」というタイトルの意味なんでしょう。

ここからのバトルシーンが凄いんです。詳しくは下の動画を見てください。

バトルが佳境に入る中、フロンティアセクターは問います。「アンジェラバルザック、わたしと一緒に来ませんか?」 ディンゴやディーバの人々の誰も、ロケット搭乗の呼びかけに応じなかったのです。

アンジェラはバトルの中、上空で撃ち落とされる中、もともと美しかった地上の姿を空目します。アンジェラは地上にはまだわたしに知らないことがたくさんある、と言って、フロンティアセクターの誘いを断りました。

フロンティアセクターは単独で宇宙へ。アンジェラとディンゴはそれをなんとも言えない気持ちで、しかし祝うべきこととして見送ります。最終的にアンジェラとディンゴが仲良く笑いあっているシーンで、物語は幕を落とします。

このアニメの良い点

まず、映像が見どころです。今回の作品は映像のために物語が作られてる感じです。

3Dアニメと言っても、正統派の3Dではありません。3Dを突き詰めるとピクサーとかディズニーの3Dアニメになってしまうので、それと差別化し、日本独自のアニメの流れを受け継いで、あえて手描きアニメに近づけています。

下の映像見ても、わたしはどんな作業やってるのかちんぷんかんぷんなんですが、きっと大変なんだろうなというのは伝わってきます。

 

「仁義」というキーワードがやたら出てきましたし、テーマソングも何回も流れました。

機械が活躍するSF世界で、対称的な概念として「仁義」だったり「歌」みたいな人間的な概念を強調するのは常套手段ですね。普遍的な感動できるテーマです。

歌「EONIAN」、かっこよかったですね。感動出来ると思います。



アンジェラの設定、いいですね。中身は大人だけど見た目は少女。高校生くらいの少女が、大人の口調で喋ります。声優の釘宮理恵さんも、大人バージョンと少女バージョンで声を使い分けていて、すごくよかったです。
「アンジェラバルザック 画像」の画像検索結果

マテリアルボディ、つまり肉体を構成する時間が惜しかったから、と理屈をつけるところが虚淵さんらしいですね。

終盤のフロンティアセクターの「単独宇宙探索」の決断も、虚淵さんの哲学が現れている感じです。「周りにどうみられようが、自分がそれでよければいい」みたいな。

虚淵さんがこの作品は代表作だ、とか言ってましたが、まさに自分を表現した作品なのかもしれません。

このアニメの悪い点

ディンゴさん、最後の歌、微妙に音程ずれてませんでしたか……!? まあギリギリセーフな感じだったので、特に気にしなければ問題ないですけどね。

なぜ面白いのか?

王道でありながら、完全には先が読み切れない展開。そして物語一辺倒にならず、映像を引き立てるために脚本がある感じがいいですね。本来、映像が面白ければ話は二の次ですから。

ネットやロボットが出てくる内容が3Dアニメーションとまさにベストな組み合わせです。ミサイルの乱舞とか、ネットの表現とか、3Dアニメの得意分野ですからね。

キャラも立ってましたね。カッコつけたディンゴのおっさんくささは人気がありそうです。アンジェラも最後はちょっとデレてましたね。

脚本が「まさに虚淵」という感じで、色が強く出てたのもいいと思います。本来、虚淵さんの魅力はグロじゃなくて独特の哲学ですから。

ここからオマケです。3Dアニメと言えば、今度「アルペジオ」が映画化されるみたいですね。

「アルペジオ」は楽園追放と比べれば、映像は劣りますが、TVアニメでこのクオリティなら申し分ないんじゃないでしょうか。劇場版放送前に、TV版は復習しないと!




アニメ「サイコパス」はなぜ面白いのか?


前回まで、小説ばかりのレビューが続いたので、気分を変えてアニメのレビューをしていこうと思います。

ここでなぜ、「サイコパス」なのか? それは(前回)まで取り上げてきた作家「冲方丁」さんがその第二期「サイコパス2」のシリーズ構成を務めていたからです。(脚本は熊谷純という方です)

「サイコパス」は~にかけて放送されたノイタミナ枠のアニメです。監督は塩谷直義さん、ストーリー原案はかの有名な虚淵玄さんです。

概要

人の心が解析できる近未来管理社会が舞台です。

この世界では、シビュラシステムは人々の犯罪係数や色相を判定し、それをもとに人々は「理想的な人生」を送ろうとしています。

そのような社会でも起こる犯罪を取り締まる公安局に、女の子の新人刑事「常森朱(つねもりあかね)」が入社します。その直後に起きた事件を追ううちに、朱は公安局の人々が、犯罪者を執行するために使う「ドミネーター」の脅威を知ります。

……言葉で言ってもピンと来ないかもしれません。

動画サイトで一話を見つけたので、まずは見てみましょう。ノイタミナ枠なので時間は約22分と短めです。




さて、衝撃的な一話だったと思います。虚淵さんが書いたということも納得ではないでしょうか。

ここからはネタバレの感想もしていくので、未視聴の方は全話見てから続きを呼んでくださいね。



このアニメの良い点!

わたしは「それなりに構成されたストーリー」「今風のキャラクター」だと思います。

正直言って物語はよく考えると穴だらけなのですが、深く考えなければ楽しめます。(だからあえてここでは穴を指摘しません)

最近は構成もへったくれもないアニメが溢れかえっていますアから、こういう「物語」になっているアニメは発展してほしいですね。

どのへんが良く練られているかというと、たとえば「全身義体」の設定の使い方が挙げられます。

全身義体という設定は、「攻殻機動隊」で既に多くの人に知られたネタですが、サイコパスではそれをさらに発展させています。

サイコパスでの「全身義体」とは、脳味噌以外全部義体を指します。では、余った脳はどうするのか? そこでシビュラシステムの設定が出てきます。

つまり、「全身義体」という設定があったからこそ、あの「脳味噌システム」の衝撃展開が成り立つのです。全身義体という設定がなければ、唐突に「脳味噌」がクレーンで動いているのを映像で見せられても、説得力がないですからね。

キャラクターの人間味

今のアニメ視聴者は主に、キャラクターに感情移入して、あるいはキャラクターをネタにしてアニメを見ます。

いくらストーリーを練っても、それに気づかない人々が大半です。そういう人たちに向けて、登場人物のキャラクター性を際立たせるのは、有効な手法です。

悪い点

個人的には、衒学的な言い回しでしょうか。哲学書の引用はくどすぎた気がします。もう少し、引用すべき時に引用というように、頻度を落とした方がよかったのではないでしょうか。

また、納期の関係で、「サイコパス」の脚本作業はかなり期間が短かったと虚淵さんは言っています。シビュラシステムの正体が明かされたのち、若干ネタ切れ・失速感を覚えるのはそのせいでしょうか。

あと、厳密に考えると矛盾がある点は先ほど述べたとおりです。

他にも語りたいことはありますが、全てを書き切れません。情報量が多くて、他人に話したくなるのは、このアニメの長所でしょう。

まとめ

個人的に、最近のアニメの中ではすごく面白かったです。久しぶりにちゃんとしたアニメを見た感じでした。最近忘れられていたSF管理社会・警察ものを思い出させてくれたという意味でも、よかったのではないでしょうか。

なぜおもしろいのか

ここからはこのブログの肝であるそこに斬り込んでいこうと思います。

本質的には、このアニメが取り上げた「管理社会」や「就職の大変さ」というテーマが現代に似ていて、人々の心に響いたことでしょうか。

作品が描くテーマが時代性と一致したとき、多くの人が作品に心惹かれます。時代性とは多くの人々が作り上げる雰囲気のようなもので、そこを狙えばマジョリティーの支持を得られるというわけです。

時代性を狙うには、世界中のニュースに敏感になったり、自分が感じる最近の「空気感」に敏感になったりすればよいと思いますが、なかなか難しいと思います。もっと簡単な言葉・論理で表現できないか、わたしも模索中です。

あと他の面白い理由としては、グロ描写もかなりキツめで、それも人々の関心を引いたかもしれません。エロとグロは客を引く一番簡単な方法です。

裏方の人々に光を当てるなら、ずばり、脚本の優秀さと、映像のスタイリッシュさでしょうか。

塩谷さんは香港の夜景をもとに背景の案を出したようですが、あれはいいですね。なかなかああいう綺麗な絵は、プロダクションIG以外では作れないかもしれません。

虚淵さんはこれまでの作品を見る限り、論理的に物語を構成していると思います。勘であんなにきれいに構成された作品を作ることはできません。

論理的に物語を作ることで、息をつかせぬ・予想できない展開を作ることも可能になります。そこは作家志望の人たちは学ぶべきだと思います。

虚淵さんについてさらに述べるなら、彼は過去の作品の美味しい所を持ってくるのが得意です。

過去のジャンルの面白い所を集約させつつ、最近のアニメらしいキャラクターでストーリーを進めている点は評価できます。

過去の作品を学ぶことはパクリではありません。創作の際には、物語の「テーマ」を決めるのが一般的です。それに基づいて過去の面白い王道展開を持ってくるなら、問題はありません。

……とここまで熱く語ってきましたが、実はわたしは個人的に第二期のほうが好きです。次回は「サイコパス2」のレビューをしていこうと思います。

 
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